アウター・ワールドのサウンド - パート2

ゲームオーディオ

アウター・ワールドのサウンドを解き明かすブログ、後編にようこそ!

パート1では、アウター・ワールドのクリーチャー、音楽システム、VO(ボイスオーバー)、エミッター、アンビエンス、そしてスペーシャリゼーションをデザインしていく過程を説明しました。さらにパート2では、ウェポンやインベントリ、そしてスクリプトのあるイベントの一部などを見ていきますので、お楽しみください!

インベントリ

デザイン

私たちは、アウター・ワールドで何を「インベントリ」としてとらえていたか。「インベントリ アイテム」とは、プレイヤーがゲームプレイ中にピックアップしたり、消費したり、インベントリ スクリーンからドラッグ&ドロップで出し入れできるゲームオブジェクトのことです。いくつかのカテゴリを紹介すると: 

  • ウェポン
  • アーマー
  • 消耗品
  • クエストアイテム
  • ウェポンやアーマーのMOD

インベントリアイテムは、まるで計画外の変数のような役割を担いながらハルシオンのコロニーにプレイヤーを引き込んでいき、プレイヤーはいくつもあるワールドを旅しながら、あらゆる種類のアイテムを入手したり使ったりします。プレイヤーが前進する上で重要になるので、どのアイテムも、見た目に匹敵するくらい独自のサウンドを出すことが大事でした。私たちが細かいところまでこだわったので、プレイヤーが遭遇する数々のオブジェクトを通して、ワールドがさらにイキイキとします。インベントリアイテムの音をデザインしていく中で、できるだけオブジェクトの本当の音に近づけることを信念としました。空き缶を拾ったら、プレイヤーには空き缶の音を聞いて欲しいのです。

アイテムは、9種類の親カテゴリを設けて、合計48のサブカテゴリに分け、レコーディングとデザインを行いました。テスト用のレベルをつくり、ゲームに出てくるピックアップを1つ1つテストできるようにしました。

1_Inventory_TestLevel

各サウンドに使ったプロップはすべて、オブジェクトの材質と品質に合わせました。各アイテムの写真を撮って印刷して、参考資料としてスタジオに持ち込み、私たちのレコーディングがビジュアルと合うように気を付けました。

それでは、サウンドをレコーディングしたりデザインしたりする際に、目的を達成するために設定したガイドラインを紹介します:

1.控えめに!
      a.トランジェントはソフトで控えめにして、強くてシャープなものにはしないように。
      b.プレイヤーは、ピックアップするときは自然に、比較的ゆっくりと、早すぎない動作で。
2.明確な違い
     a.どの音も、とても分かりやすいフィードバックを出す必要がありました。
     b.同時に、頭に残るような、何らかのリズムを、どのサウンドにも取り入れることを心掛けました。
3. 短く
     a.唯一の例外が、Music Boxでした。
          i.長さは1秒以内と決まっていました。
     b.不要なフィードバック防止のために簡潔に。

オブジェクトのレコーディングは、サブカテゴリごとに行いました。そこで例えば「Armor Medium」というアーマーのために、2種類の生地を用意して、それぞれ上記ガイドラインに従いながら「つかむ」「動く」「しわがよる」という録音を複数回、行いました。下の図でトランジェントポイントを見ると、何種類のバリエーションをレコーディングしたかが、だいたい分かります。

2_Inventory_Categories

こちらがフォーリールームで、様々なプロップを使い、レコーディングスタジオに持ち込みました。

3_Inventory_Foley1

foley outer worlds

レコーディングスタジオのフォーリーセッションの写真です:

6_Inventory_FoleyRecording1

2foley outer worlds

 

使った物(一例):

  • ドアノブ
  • 色々な種類の服
  • ラップ
  • 本物の剣
  • 木の棒
  • 床タイル
  • 水筒
  • アメの包み紙
  • 私物のメッセンジャーバッグ
  • 戸錠
  • 金属のバネ

こういった物がすべてあったおかげで、アウター・ワールドのインベントリSFXの多種多様なサウンドが出来上がりました。こちらは、テストレベルで色々なアイテムをピックアップする、一般的な動画です。

ポスター:

 

トスボールカード:

 

なかにはデザインマジックが必要なアイテムもあり、例えばこのマジックボックスには、Justinがスペーサーズチョイスのためにチェレスタのサンプルを使って作曲したジングルを再生しています。

なかにはデザインマジックが必要なアイテムもあり、例えばこのマジックボックスには、Justinがスペーサーズチョイスのためにチェレスタのサンプルを使って作曲したジングルを再生しています。

ただ、意図を明確にできるようになるまでに時間がかかりました。多くの音で、バリエーションの再生が長すぎたのです。カードを0.5秒で拾い上げるのではなく、1秒間かけて拾いながら、軽くしわを寄せました。そうすると独特の音になるのですが、何回もカードを拾い続けたときに、音にイラつきます。独特の音も素晴らしいのですが、控えめにするのも効果的で、ゲームプレイオブジェクトを拾うときのエフェクトのフィードバックとしては良くなります。

 

インベントリの実装

どのオブジェクトでも、拾って(pick up)インベントリにドラッグする音のバリエーションが3つあり、消費する音(consume)も、該当する場合は1つあります。こちらは、そんなサウンドの1つをWwiseで見たときの様子です。

12_Inventory_Consumables

 

全部のサウンドを分かりやすく整理するために、サウンドオブジェクトの命名規則に必ず準拠するようにして、全サウンドを、大きく具体的なカテゴリに分けましたが、その一例が、こちらのあるConsumables(消耗品)の展開した状態です。

13_Inventory_Organized

 

こちらは、同じアイテムの音のバリエーションの例で、プレイヤーが種類の違う缶を拾ったときの音です:

 

インベントリのSFXで一番難しかったことの1つが、うまく整理してまとめることでした。どのアイテムにもゲームプレイタグをアサインする必要があり、私もアサインを担当することがあり、次にそれぞれのタグを音にアサインしました。Unrealでは、下のように、1つのゲームプレイタグを1つのAudio Eventにアサインしていきました:

15_Inventory_Unreal

このオーディオデータツールで達成できたバリエーションは画期的でしたが、ちょうど良いかたちに整理していくのは、それなりに時間がかかり、バグをフィックスするときに、また戻って、アサインした音を変更するためにサウンドやタグを探すのは難しかったです。

アウター・ワールドのインベントリのSFXとして、これほど大量のバリエーションを作成できたことを、私たちは実に誇りに思っています。

カットシーンの実装

初期のころに下した決断の1つが、アウター・ワールドの核心となるプレイヤーの意思を尊重する、というものです。私たちはゲームのあらゆる局面にこの信念を反映させたいと考え、カットシーンの再生はプレイヤーの好みに合わせることに決め、オーディオではゲームのグローバルサウンド設定に従うことにしました。 

ところが、これではゲームプレイ中は難なく管理できても、カットシーンではミックスを管理するのが問題でした。例えば、どのカットシーンのときも、プレイヤーが音楽を消しているかもしれません。そうなると従来のリニアなプロダクション方式(事前に動画にすべてミックスしておく)が使えず、代わりに、複数のサブミックス(音楽とVOとSFX)を、プレイヤー設定に基づいてリアルタイムにミキシングできるソリューションが必要となりました。

そこで、ミュージックバスに、このように単純にサイドチェインを使いました:

1_Cutscenes_SideChaining

スクリプトされた場面

エメラルド・ヴェールの送電先の決定

ネタバレ注意!

探検できる最初のエリアがエメラルド・ヴェールで、プレイヤーはここで初めての重大決断を迫られます。地元の工場労働者たちにとって生活の中心ともいえる缶詰工場がある一方、会社生活から離脱して自然の中で温室をつくった小さなコミュニティもあります。プレイヤーはこの地域の地熱発電所から出る大容量の電力を、缶詰工場に送電するのか、温室に送電するのか、決める責任があり、結果的に電力を供給されなかった方は運営を妨害されます。

私たちは、プレイヤーの判断に重みを加えたいと考え、また、この選択によってどのような影響が出てくるかを、周りのワールドの聞こえ方によって明らかにしたいと思いました。そこで、プレイヤーが選んだ送電先によって多数のオーディオエミッタ―の音をオンまたはオフにすることにしました。例えば、プレイヤーが温室に送電すれば、缶詰工場では機械類の多くが電源を絶たれて音を出さなくなり、頭上の警報が鳴り響く中、工員らがパニックになるのが聞こえます。

TTDの導入シーケンス

ゲームのストーリーの冒頭にも同じアプローチの事例があり、プレイヤーは初めてTTD(Tactical Time Dilation)という自分の特別な時間操作能力を知ることになります。長い間、冷凍睡眠の状態だったプレイヤーは、謎の科学者のおかげで急に目覚め、まるで別世界のような周りの状況に困惑します。着陸して間もないプレイヤーは洞窟の中を歩き回り、不思議な精神状態に陥り、突如、自分が冷凍睡眠をしている間に、時間を短期間だけ遅くする能力を修得したことに気付きます。

この「瞬間」を制作し始めた私たちは、時間をワープしたと知ったときの混乱状態と、方向感覚を失った戸惑いを、サウンドを通してプレイヤーに感じてもらいたいと考えました。同時に、不安を盛り上げながらもテンションを高めるために、周囲を探索する自由度をプレイヤーに与えて、緊張が高まったときに、とうとう自分では制御不可能な状態(精神的にも、ゲーム内でも)に行きつくようにしたかったのです。

スクリプトされたこのシーケンスをつくるために、いくつかの技術的なコンポーネントを組み合わせています。まず、Ak Ambient Soundのエミッターオブジェクトが、インゲームのTTD音や、ループする疲れ切ったプレイヤーの息づかい音に基づいた、独特のドローン音をループで再生します。これらの音が互いに補完し合って、プレイヤーは、近くにある謎の心理的な刺激に身体も精神も反応しているように感じます。TTDのドローンも、プレイヤーの息づかいも、独自の、比較的小さい減衰半径があり、プレイヤーがエミッターにかなり近づいたときに、ボリュームが急に大きくなります。こうして実装した音を聞き、プレイヤーは自らこの体験から身を引くか、自分のペースでさらに調査にかかります。

スクリプトされたTTDドローン音の、Attenuation Shareset

1_Scripted_TTD_Emitter_Attenuation

スクリプトされたプレイヤーの息づかいの、Attenuation Shareset

2_Scripted_TTD_Breathing_Attenuation

TTDドローンの3Dポジショニングは、距離が遠くてもSpeaker Panning/3D Spatializationパラメータを使って一部が維持されますが、プレイヤーの息づかいのサウンド要素は、ポジショニングのオーバーライドを利用してプレイヤー上で2Dで再生され、ボリュームの減衰の増減は距離パラメータのみによって決まります。

TTDドローン音の、Speaker Panning/3D Spatialization パラメータ

3_Scripted_TTD_Speaker_Panning

疲れきったプレイヤーの息づかいのループは、男性もしくは女性の息づかい音にするために適切なSwitch Groupを設定し、PlayerGenderというStateを使うSwitch Containerで構成されます。

スクリプトされたPlayerの息づかい(breathing)のSwitch Container

4_Scripted_TTD_Switch_Container

これらの息づかい音はBlend Containerに入っていますが、Blend Trackが、息づかいのアセットの low intensity(弱)と high intensity(強)の間をクロスフェードします。Intensity(強度)は距離に基づいて変化し、プレイヤーがエミッターオブジェクトに近づけば近づくほど、より速く、より荒れた息づかいになります。

プレイヤーの息づかいの強さ(breath intensity)のBlend Track

5_Scripted_TTD_Blend_Container

このシーケンスの2つ目のコンポーネントは、レベルのAk Ambient Soundエミッターオブジェクトのちょうど下に配置したtrigger volume経由でコントロールされます。このトリガーボリュームが「限界点」に達すると、プレイヤーの制御がきかなくなり、スクリプトされたオーディオビジュアルのシーケンスが始まり、徐々にTTDのメカニズムが、初起動されます。Delayed Callback、Remote Event、Post Sound at Locationの各ノードを組み合わせて使い、時間設定をしたリードインサウンドがトリガーされ、それが徐々にTTDのスタート音となり、TTDドローンエミッターオブジェクトが無効になります。

サウンドエミッターとトリガーボリュームの配置を、UE4のレベルでひととおり見る

スクリプトされたエミッターオブジェクトを、条件付きで無効にするUE4 Blueprint

7_Scripted_TTD_Sound_BP

トリガーボリュームに入ったときに、スクリプトされたリードインサウンドを初期化するUE4 Blueprint

8_Scripted_TTD_Level_BP

ゲーム中に起きる、スクリプトされたTTDの導入シーケンス

このシーケンスでは、音と実装が連携しながら進み、プレイヤーに強い心理的な反応を引き起こすだけでなく、プレイヤー自身が空間の中で行動するためのギリギリの自由度を与えています。このアプローチの仕方で、プレイヤーが、自然発生した心理的な出来事に圧倒されるという、根本的なストーリーを反映して、サポートしているとともに、ワールド内のプレイヤーの主体性の要素が、維持されると私たちは考えています。

 

Tactical Time Dilation (TTD)

前セクションでも触れたとおり、アウター・ワールドの中核にあるゲームプレイ構想の1つが、短期間だけ時間の経過を遅くできるプレイヤー能力です。時間を「膨張」させる TTD(Tactical Time Dilation)をペースの早い戦闘中に行使すればプレイヤーに有利にはたらくだけでなく、敵をスキャンして、派閥や弱点や強みなど役立つ情報をチェックできます。TTD中にうまく攻撃できれば追加のデバフ効果もあり、敵にさらなるダメージを与えます。

このメカニズムのサウンドをデザインして実装するにあたり、いくつかの点を考慮しました。何と言っても第1に、この能力に伴うオーディオは、プレイヤーの特別感と力の増大を裏付けるものにしたかったのです。この特殊能力を使えるキャラクターは、プレイヤーだけです。2つ目に、このメカニズムが明確な音響フィードバックを発することが重要で、プレイヤーは自分の行動に集中して、能力のステータスは音を通して分かるようにしたいと思いました。具体的には、スローモーションタイムの残り時間や、今の消費状況などを伝えることです。最後に、ためになる情報をゲームフィードバックとして出すことに関連して、このメカニズムがプレイヤーの行動への反応だと感じるようにしたいと思いました。プレイヤーのスキルツリーの属性と、有効なバフと、プレイヤーが実行中のアクションの、相互のやり取りによって、TTDが続く時間が変わります。

TTD

1_TTD_active

TTDの主なビジュアルフィードバックは、画面の左上に表示される紫のメーターと、中央のレティクルまわりの紫の円です。2つの紫メーターの残量が、TTDの残り時間を示します。メーターが減っていくスピードは途中で変化します。私たちはこのフィードバックを音で裏付けたいと思いました。

TTD入りするとイベントが発射されてワンショットの「スタート」音がトリガーされ、一緒にフンワリとした、スタイルの安定したオーディオ要素がループする「ベッド」が始まり、TTDがアクティブな間、変化しながら鳴り続けます。TTDを出たり、使い切ったりすると、ワンショットの「終わり」音がトリガーされ、ループしていた要素がすべてフェードして停止します。

TTDの開始

 

TTD  の「base」

TTDサウンドスケープの役割の1つは、ゲームプレイの緊張感の高まりを演出して、TTD中の状態が続けば続くほど、プレイヤーキャラクターの頭の中が前へワープするという話を裏付けることでした。TTDが満杯状態では、base(基礎)のループ音がフンワリとして質感がありますが、TTD残り時間が低下すると根底にあるbaseが混乱してきて、不安定に歪んできます。これは、アクティブなBlend Trackを入れたBlend Containerを使い、3段階の激しさをクロスフェードさせるbaseのループがあるからです。ゲームの変化を追うGame-driven設定のRTPC( TTDMeterPercent )によって、Blend Trackのトランジションを動かします。

TTDのbaseのループのBlend Container Track

3_TTD_Blend_Containers

 

4_TTD_Blend_Containers_Objects

 

また、TTDのbaseが小さくなるにつれBlend Containerのピッチやボリュームをダイナミックに増加させる、 TTDMeterPercent というRTPCを設定しています。

5_TTD_RTPC_Base

 

このように、Blend ContainerとRTPCの実装で、TTDを裏付ける、感性に響く進化型のサウンドスケープが成立し、ゲームプレイでTTDが減少中に、あとどれくらい時間が残っているのかをプレイヤーに伝えることに成功しました。

TTD baseのintensity(激しさ)の変化

 

TTD 'Drain'

TTD のメカニズムのうち、TTD メーターのdrain(減少)具合も重要な要素です。前述のとおり、サウンドの役割として、プレイヤーにTTD の状態を音として分かりやすくフィードバックしつつ、プレイヤーのゲームプレイというインプットに反応して表現すること、という2つがありました。TTD のdrain速度はいくつかの要因で変わるので、その変化をできるだけ正確に反映するシステムが必要でした。例えば、プレイヤーがTTD を起動してもアクションを実行しなければ、メーターの減少速度は遅く、安定しますが、プレイヤーが素早く動きながらジャンプやシューティングなどのアクションを起こせば、メーターの減少は速く、大きくなります。これを音で表現するためにゲート(gate)型のシステムをつくり、そのゲートを通過するTTDのdrain音を増減させることにしました。実現するために、TTDが起動したときにトリガーされるループサウンドオブジェクトを作成したのですが、デフォルトのVoice Volumeは -200としています。 

TTDのdrainサウンドオブジェクトが、複数のRTPC(TTDMeterDrainRate 、 TTDMeterPercent )に反応して、次のように変化します:

A)ボリュームレベルを、より多く通過させます
B)もっと大きいdrainがトリガーされるにつれ、ピッチをわずかに下げます
C)もっと大きいdrainがトリガーされるにつれ、ローパスフィルターを開きます

7_TTD_RTPC_Drain_Volume

 

8_TTD_RTPC_Drain

 

TTD の drain エフェクト実装

 

Game Sync MonitorでTTD パラメータのやりとりをプロファイリング

 

また、TTDのパラメータとステート(TacticalTimeDilation)を広範囲に使い、様々なパラメータを制御することで、TTDがアクティブなときのミックスをさらに工夫しました。これらのパラメータを使い、TTD が起動中に音を削除したり、フィルターをかけたり、ピッチを変容させたりして、没入感を高め、プレイヤーがTTD を活用するたびに、インパクトの大きい瞬間だと感じるようにしました。

11_TTD_Parameter_Mixing_Vehicles

 

12_TTD_Parameter_Mixing_Environment

 

実装方法とサウンドデザインが一緒に連携して、プレイヤーのゲームプレイを強化し、役立つオーディオフィードバックを提供しながら、ゲームプレイの動きに反応しているように機能します。

ウェポンの実装

アウター・ワールドのようなゲームのウェポンシステムは、ガン(銃)と、ガンの改造、そして環境や視野などの組み合わせが数百種類にものぼり、かなりしっかりとしています。これだけの組み合わせに対応すために、私たちはウェポンに関してモジュラー形式をとり、どの場合でも適切かつ固有の音が出るようにしました。そうすることで、最小限の良質の音だけで、プレイヤーからのインプットに反応できるサウンドスケープを維持できます。

Base

Base(ベース)がガンの肝心な部分になります。ベースはガンごとに違い、その色味を表し、聞けば、どのウェポンか分かるようになっています。比較的短いサウンドなので、様々な長さのテイルをつけるスペースが残っていますが、重要なことを主張する場所も確保できています。Wwiseでは、このレイアをコピーして2つの別々のActor-Mixerに入れ、1つはPC(プレイヤーキャラクター)用に、もう1つはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)用にしています。こうすることで、それぞれのミックスを簡単に制御できます。ベースレイヤのセットアップは、以下のとおりです:

1.ガンの発砲音
2.発砲音は短く、テイルのスペースを残してあります
3.個々のベースサウンドがあることで、そのウェポンの個性が出ます
4. Split up by Player and Non-Player (same sound)      

1_Weapons_Base

 

Exterior Tail

アウター・ワールドのexterior tail(屋外テイル)は、ウェポンを屋外で発砲したときだけに再生されるレイヤです(WwiseのState経由で制御)。屋外環境で発砲したときのリバーブを表すために、exterior tailをガンごとにカスタマイズしました。ベースレイヤと同じくらい重要なもので、ガン自体が大きく、音も大きく感じられ、信ぴょう性につながります。ベースレイヤと同じく、こちらもコピーしてプレイヤー用とノンプレイヤー用の別々のActor-Mixerに入れました:

1. 屋外だけで再生されます
2. ウェポンごとに異なります
3. 音が大きく(または小さく)聞こえるように錯覚させます
4. 信ぴょう性を高めてワールド内にあることを感じさせます
5. PCとNPCに分けます(同じ音)

Interior Tail

Interior tail(屋内テイル)のレイヤはexterior tailのレイヤに似ていますが屋内で再生されます。Interior tailは、ゲームの様々な部屋の大きさに合わせてデザインしたので、狭い部屋で発砲すれば、狭い部屋の発砲音になります。Exterior tailと異なり、こちらはゲーム内のすべてのガンにグローバルに使います。これらのテイルは、ガンの発砲と合わせて再生され、大きさはState経由で制御します。Stateはゲームのすべての屋内の部屋に対し、手作業でそれぞれ設定しました(設定を担当してくれたDylan Hairston、ありがとう)。

1. 屋内だけで再生されます
2. グローバル、つまりすべてのガン用です
3. 部屋の大きさによって、異なります
4. ルームサイズを変えるのにスイッチを使います

2_Weapons_InteriorTail_A  

 

3_Weapons_InteriorTail_B

 

ダメージタイプ

アウター・ワールドのウェポンシステムはロバストなモジュラーシステムで、ウェポンが施すダメージタイプを自分で変えられます。プレイヤーにこれだけ選択肢があるので、それに見合うように4つのダメージタイプに別々のサウンドをデザインし、ベースやテイルにレイヤーとして重ねました。これらのサウンドをRTPC経由で切り替えて、さらにWwiseのスイッチに変換します。このレイヤは控えめにデザインし、通常のウェポン音のスペースは残しつつ、プレイヤーが自分の選択に対する反応が返ってくるのを感じられるようにしています。

1. ベースとテイルに重ねるレイヤーです
2. グローバル、つまりすべてのガン用です
3. ダメージタイプごとに違います
4. ダメージタイプは、スイッチに変換したRTPCに基づいて切り替わります
5. プレイヤーの選択に対する反応を強化します

4_Weapons_DamageType_A

 

5_Weapons_DamageType_B

 

(遠距離)

遠くからNPCたちが撃ってくるときは、信ぴょう性のある環境をつくり、遠くにいることを強調するのと同時に、ミックスの内容を整理して、近場の脅威のためのスペースもつくろうと考えました。そのために、グローバル設定の遠距離用の発砲音をつくり、プレイヤーから敵が離れていくにつれ、ベースレイヤやテイルレイヤとクロスフェードさせます。発砲音の遠距離バージョンは、短くまとまったトランジェントであり、もっと近場の脅威用のスペースを空けながら、ミックスから急に飛び出てきて、プレイヤーに「まだここにいるよ!」と伝えます。

1. 敵がかなり遠くから発砲しているときだけ、聞こえます 
2. ベースレイヤや、テイルレイヤと、クロスフェードします
3. クロスフェードは、Attenuation Sharesetsに対して直接行います
4. 短いトランジェント音が、ミックスから一瞬、飛び出してきます

6_Weapons_Attenuation

 

薬莢

最後に、薬莢音を忘れてはいけません!その名の通り、空の薬莢が床に落ちる音です。この音は何らかの物理的なシステムに基づいているわけではなかったので、WwiseのDelay機能を使い、ウェポンから床に落ちる時間をシミュレーションしました。これらの音はSwitch Containerでトリガーして、実はフットステップシステムと同じSwitchを使っているので、薬莢が地面に落ちる音が、その時の足元の地面によって変わります。ほかの音と比べて重要でないと思うかもしれませんが、こういった細かいこだわりが信ぴょう性を飛躍的に向上させて、ゲームワールドに根付いた音にしていきます。

1. 薬莢を排出するウェポンにだけ、追加します
2. スパムを削減するために、ボイスを厳しく制限します
3. プレイヤーが踏む可能性のある地面素材ごとに、違う音を用意しました

7_Weapons_ShellCasings 

 

Tactical Time Dilation

TTD(Tactical Time Dilation)は狙いを定めるために時間を遅くできる、プレイヤーの能力です。このモードのときは、通常のウェポン音を完全に入れ替えて、もっと定型化したバージョンにします。目的は、元々の音の意向を保ちながら、TTDのタイムワープの影響を受けてスローダウンした様子を表現することでした。そのためにグレインピッチシフト(paul stretch)を使い、通常のピッチシフト方式で発生しがちな、忠実性の劣化を回避して、スローダウンするエフェクトを達成しました。常に標準のガン音と一緒に再生されている音なのですが、プレイヤーがTTD状態でなければ、すぐにバーチャルボイスになりWwiseがkill(消)します。ボリュームスレッショルドよりも下にあるので、そうなるのです。(注:ボリュームスレッショルドより下に下がったボイスをkillするには、ボイスリミットを超えたときの設定をUse virtual voice settingsに設定しておく必要があります。次にバーチャルボイスの動作設定をKill Voiceにします。)


1. TTDが起動中のときだけ聞こえます(それ以外は、このボイスのバーチャルボイスのKill Voice設定に従い、消されます)
2. ベースレイヤの、軽くpaul stretchがかかったバージョンです

TTD Sweetener 

これは比較的シンプルです。グレインピッチシフトの作用の特徴で、ベースレイヤーのトランジェントが、paul stretchを適用したあとに、やや汚くなり、インパクトが薄くなります。たとえスローモーションとはいえ、ガンに変わりないので、パンチの利きを失いたくありません。これはグローバルレイヤで、TTDの真っ最中でもガンに必要な「活きの良さ」を復活させてくれます。 

1. TTDが起動中のときだけ聞こえます(それ以外は、このボイスのバーチャルボイスのKill Voice設定に従い、消されます)
2. 単純なトランジェントのローエンドのヘビーレイヤであり、TTDレイヤをつくるときに失われた分を補います。

すべてのレイヤがそろったところで、ウェポンの発砲イベントに追加します。これが、その様子です。

8_Weapons_TTD

 

最後に、ゲーム中のこれらのレイヤの動画です。

 

まとめ

私たちはアウター・ワールドで達成した内容を、大変誇りに思っています。多くを学び、途中の失敗も少なくありませんでしたが、今までObsidianでやらなかった方法でWwiseを使う場面もたくさんあり、私たちの作業を推し進めるのに役立ちました。複数のワールドをつくるのはかなり大変で、特にこのゲームではプレイヤーが取ることのできる決断があまりにも多かったのですが、それでもプレイヤーが楽しめる一貫性のあるサウンドスケープをつくり出せたと感じています。

このブログで、皆さんの役に立つような情報を提供して、私たちが経験したプロセスについて、少しでも知っていただけたら、幸いです。ここまで読んでくれて、ありがとう。ハルシオンとアウター・ワールドを、お楽しみください! 

チームメンバー

ハルシオンの誕生まで、私たちオーディオチームは下記の様々な個人やチームに助けられました。オーディオはパズルのなかの1つのピースでしかなく、皆さんのサポートとスキルなくしては、実現できませんでした。

  • アウター・ワールドのQA、ナレーティブ、プログラミング、プロダクション、ゲームデザイン、VFX、アニメーションの各チーム
  • Noiseworks

The Obsidian Audio Team:

Justin Bell - Audio Director: Composer, Pipelines and System Design, Implementation and Mixing
 https://www.linkedin.com/in/justinbellaudio/
Tony Blackwell - Audio Producer: Production and Communication, Implementation and Additional Music 
https://www.linkedin.com/in/tony-blackwell/
Zachary Simon - Sound Designer: Weapons, Scripting, Optimization and Mixing 
https://www.linkedin.com/in/zachary-simon-05b75b55/
Scott Gilmore - Sound Designer: Creatures, Gameplay, VO Post-Processing, Scripting and Mixing
https://www.linkedin.com/in/scottvgilmore/
Ali Mohsini - Sound Designer: Cutscenes, Character Foley, UI, Scripting
https://www.linkedin.com/in/ali-mohsini-048883161/
Dylan Hairston - Associate Sound Designer: Ambience, Emitters, Scripting, Optimization
https://www.linkedin.com/in/dylan-hairston-97032295/
Renzo Heredia - Associate Sound Designer: Inventory, Scripting
https://www.linkedin.com/in/renzogheredia/
Jerrick Flores - Technical Designer: Spatialization, System Design, Tools, VO & Chatter, Optimization, Scripting
https://www.linkedin.com/in/jerrick-flores/
Mark Rios - Assistant Sound Designer - Spatialization, VO & Chatter, Ambient Animations
https://www.linkedin.com/in/mark-anthony-rios-8600684a/
 
Microsoft XBox Game Pass
アウター・ワールドは、複数のプラットフォームで提供されています。

オブシディアン エンターテインメント (Obsidian Entertainment)

オブシディアン エンターテインメント (Obsidian Entertainment)

カリフォルニア州アーバインを拠点とする。これまでのタイトルは、『Pillars of Eternity』『Armored Warfare』『South Park: The Stick of Truth』『Fallout: New Vegas』『Dungeon Siege 3Alpha 』『Protocol』『Neverwinter Nights 2』『Star Wars: Knights of the Old Republic 2』など。

 @obsidian

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