Krotos誕生の舞台裏

インタラクティブオーディオ

KrotosからリリースされるIgniter Live Synthプラグインは、実在する車両や未来のエンジンなどのサウンドエフェクトをつくり出すプラグインで、AudiokineticストアでWwiseユーザー向けに提供されます。日常使いの車やレースカーはもちろん、バイク、航空機、ヘリコプター、SFに登場するようなマシンまで、WwiseでIgniter Live Synthを使って自作コンテンツを数分で作成できます。Krotosの成り立ちと、今後のプラグイン全般の動向について、創業者のOrfeas Boteasに聞きました。

このビジネスを始めたきっかけと、当時の目的を教えてください。

私はポストプロダクションのサウンドエンジニア、レコーディスト、そしてデザイナーとして働いてから、サウンドデザインの修士号を取得しました。修士号の卒業プロジェクトでつくったのがDehumaniserで、これは自分の声を使って、すぐにモンスターやロボットやクリーチャーのサウンドデザインができるソフトです。モンスター音をつくるのに複数のエフェクトや動物音を組み合わせるのは楽しい作業ですが、複数のプラグインやサウンドライブラリが必要で時間がかかってしまうので、それをもっとシンプルにしようと思ったのです。その後、ソフトの動画を自分のウェブサイトにアップロードして、様々なサウンドデザインのフォーラムサイトやSNSにあげてみました。すると反応がとても良く、このソフトが欲しいという連絡も入り始めたので、最初は無料であげていたのです。とてもためになるフィードバックもくるようになり、何千回もダウンロードされました。この時点で、友達の助けを借りてProバージョンをつくることにして、2013年にリリースしました。同時にKrotosを法人化しました。詳しい流れをここで紹介していますが、プロトタイプについての初期のコメントも掲載しています。

Dehumaniser-conceptDehumaniser 'concept'

そこにビジネスチャンスを見出したのですか?それとも、自分の好きなことをやっていただけですか?

最初は自分のオーディオへの情熱に従って、自分やコミュニティにとって便利なものをつくり出そうとしていました。でもDehumaniserの人気が出てくると、ビジネスチャンスも見えてきて、サウンドデザインのソフトを出している会社が非常に少ないことに気づいたのです。当時、ツールのほとんどは音楽制作用に開発されたもので、技術革新の余地が大いにあると感じました。そこで、チームメンバーを集めてサウンドのデザインや演出の改善を目指して、もっと多くのソフトウェアソリューションを開発しようと考えたのです。今も私のオーディオへ情熱は変わらず、オーディオコミュニティに貢献できるようにがんばっています。

Krotosを起業する前に知っていれば良かったのに、と思わせるハードルやノウハウはありますか?振り返ってみて、間違いはありましたか?もう一度やるとしたら、何を変えますか?

会社の経営自体はそれなりの難しさがあり、今までの人生で最も苦労したことの1つですが、一番やりがいのあった経験の1つでもあります。最初の難題は、いかに最高のチームを編成するか、でした。元のソフトはスタンドアロン型でしたが、市場が本当に必要としていたのはVST、AAX、AUプラグインだったので、まず製品をつくるためにプログラマーを探しました。当然、スタートアップ企業としてお金の問題に直面したので、Royal Society of Edinburghのフェローシップに申し込んだところ、承認されて経営や資金集めについて学ぶ機会に恵まれました。 また、スコットランドで革新的なプロジェクトの研究開発費を70%助成してくれるSMART賞を受賞したので、最初の社員たちを雇ってDehumaniser 2の開発とリリースを達成することができました。

途中で多くの失敗はありましたが、過ちがあったからこそ、会社をここまで成長させ発展させることができたのだと思います。今は物事をシンプルに維持して、優先順位を明確にすることを大切にしています。うまくいくことに集中して、それを絶えず評価しながら、改善できることを改善していくことの方が、一度に多くをやろうとするより重要です。私は、何が一番大切で、何が一番多くの成果をもたらすかを考えながら、目標や作業内容の優先順位を決めて、それ以外のものはできるだけ排除するようにしています。製品を開発するときに、次から次へと機能を追加しても、結局全体のほんの一部しか使われていないことが、あとから分かることがあります。同時に、充分にカスタマイズできるような製品にするには、それなりの機能をそろえることも必要で、私たちチームはそのバランスの取り方をこれまで学びましたが、常に悩むところです。

Krotos OSc Wwise Loop_1.88
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社員は何人ですか?会社としての目標は?ビジネス、業界、そしてプラグインの将来は、どう思いますか?

役員を含めて社員14人と、定期的にKrotosの仕事をしてくれるフリーランスが2、3人います。私たちの目標はサウンドのデザインと演出の方法を改善することで、まずポストプロダクションやゲームから始め、今後はエンターテイメント業界のほかの分野へと展開させていきたいです。ポストプロダクションやゲームのサウンドデザインソフトからはじめた私たちは、AR、VR、MR向けのボイス処理やサウンドデザインのテクノロジーを開発しました。エンターテイメント業界や、ネットフリックス、アマゾン、アップルなどのストリーミングサービスの急成長と共に、新しいゲーミングプラットフォームや新興市場の台頭もあり、オーディオは今まで以上に重要視されているので、その一部を担えることは大変嬉しいです。Audiokineticと連携して私たちのテクノロジーをゲームやインタラクティブプラットフォームに積極的に取り込めるようにすることで、自分たちは目標達成へ一歩ずつ近づきます。将来的に、この業界はマシンラーニングやAIのおかげでもっとシンプルになれば、人間は物事のクリエイティブな面に集中できるようになり、自分の頭の中にあるサウンドを、そのままデザインに、今までよりも早く、反映できると予測しています。

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  • Wwiseプラグイン作成パイプラインが、シンプルに
  • なぜ、Wwiseのプラグインを自分で作成すべきか

コミュニティのプラグイン開発者が世界中から、Wwiseユーザー向けにAudiokinetic StoreでWwiseプラグインを登録・販売中。

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オルフェアス・ボテアス(ORFEAS BOTEAS)

オルフェアス・ボテアス(ORFEAS BOTEAS)

2013年にKrotosを設立。Krotosのミッションは、音のデザインや演出をもっと素早く楽しくできるような方法を生み出すこと。これまでKrotosのソフトウェアは、アベンジャーズ、ゲーム・オブ・スローンズ、ストレンジャー・シングス 未知の世界、ライオン・キング、ソニック、ファークライ、Killer Instinctなど、数々の人気映画、シリーズ、ビデオゲームで採用される。エンターテイメント業界でサウンドエンジニア、そしてサウンドデザイナーとして長年活躍。大学でミュージックテクノロジーと音響を学んだのち、サウンドデザインの修士号を取得。Royal Society of Edinburghのフェローの経験もあり、Krotosの業績によりYoung EDGE賞やEdge Higgs賞を受賞。

 @KrotosAudio

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