FINAL FANTASY VII REMAKE のサウンド

ゲームオーディオ / サウンドデザイン

私たちは様々なゲームオーディオ、そしてゲームオーディオの歴史を形成してきたサウンドにインスパイアされてきました。私たちは幸運にもスクウェアエニックスのサウンドチームにインタービューする機会があり、クラシックゲームの音楽の「再開発」がどのようなものであったかについて話をしました。
スクウェアエニックスのサウンドチームの音楽、そしてテクノロジーへのアプローチをぜひご覧ください。

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イントロダクション: 

FINAL FANTASYシリーズとスクエニサウンドチームは長年にわたって最先端技術のクオリティをすべてのチームメンバーの役割の間で保ち続けていると思います。今回のFINAL FANTASY VII REMAKEのサウンドチームメンバーを役職や役割について(過去のFINAL FANTASYタイトルの経歴などあれば)紹介してもらえますか?

伊勢誠です。FINAL FANTASY VII REMAKEではサウンドディレクターを担当しました。サウンド全体のクオリティ管理、仕様設計の立案、制作、実装等全般的な制作と管理進行を行っていました。

過去作の参加はFINAL FANTASYシリーズでは FINAL FANTASY IX、FINAL FANTASY XII、FINAL FANTASY XIV, FINAL FANTASY Type-0, FINAL FANTASY クリスタルクロニクルシリーズ等に参加してきました。

鈴木光人です。FINAL FANTASY VII REMAKEでは主に新曲関係の作曲と編曲、担当楽曲周りのディレクションを行なっています。過去に参加したFINAL FANTASYタイトルは、FINAL FANTASY XIIIシリーズ(FINAL FANTASY XIII、FINAL FANTASY XIII-2、LIGHTNING RETURNS FINAL FANTASY XIII)、MOBIUS FINAL FANTASY(iOS/Android)などを担当しました。(鈴木)

河盛慶次です。FINAL FANTASY VII REMAKEではミュージックスーパーバイザーとして音楽製作に関わりました。作業内容は、楽曲の鳴らし方の設計から、コンポーザー、アレンジャーへの発注、ディレクション、実装を担当。今まで、FINAL FANTASYシリーズは、FINAL FANTASY VIII、FINAL FANTASY IX、FINAL FANTASY X、FINAL FANTASY XII、FINAL FANTASY XIII、FINAL FANTASY XV等の製作を担当していました。(河盛)

谷山輝です。FINAL FANTASY VII REMAKEでは、リードオーディオプログラマーとして制作に携わりました。内製サウンドドライバー・オーサリングツールの開発、UNREAL ENGINE 4のプラグイン実装を担当していました。過去に関わったFINAL FANTASYタイトルは、FINAL FANTASY XIIIシリーズ、FINAL FANTASY Type-0、FINAL FANTASY XIV, FINAL FANTASY XV、MOBIUS FINAL FANTASY等の開発に参加してきました。

菅沼篤です。FINAL FANTASY VII REMAKEではSupervising Sound Editorとして、本作品のフォーリー全般のマネジメントとディレクション、またカットシーン全般のミックス等担当しました。過去のFINAL FANTASY シリーズの実績としては、FINAL FANTASY XIIシリーズ3部作、FINAL FANTASY XV, 映画FINAL FANTASY XV KINGSGLAIVEを担当しました。(菅沼)

音楽 イントロダクション:

オリジナルFINAL FANTASY Ⅶの音楽はたくさんのオリジナルファンから愛されてきていて、新しい世代のファンも同様な体験をしてきていると思います。 今回のFINAL FANTASY VII REMAKEの機会の中で、オリジナルから今の時代に合わせた音楽へとリメイクする際に、感性的な観点から作曲家はどのような点に考慮して作曲されたのでしょうか? また、FINAL FANTASY VII オリジナル時代の音楽のどの要素が重要視され今回のFINAL FANTASY VII REMAKEに生かされて、ゲーム中のどの箇所へ適応されていったのでしょうか?

音楽面ではオリジナルからプレイをされているファンには懐かしさと同時に新しさを、FINAL FANTASY VII REMAKE からプレイされる方には斬新さを感じてもらえるよう心がけました。例えば楽曲の鳴らし方に変化があるのと同じく、音楽にもその時代に合った音色やリズムが存在します。それらをFINAL FANTASY VII REMAKEという世界観の上で成り立たせるのは新しい体験になるのではないか、また取り込むべき要素の一つであると考えました。(鈴木)

オリジナル楽曲の重要で素晴らしい所は、植松さんが作りだしたメロディー、世界観と、片翼の天使等の楽曲からも解るように、常に新しい事にチャレンジする姿勢、その2点だと思っていて、FINAL FANTASY VII REMAKE でも、その点は大事に音楽の製作を進めました。また、少しマニアックな所ではオリジナルは内蔵音源で作成されているので、当然リッチな音ではないのですが、荒々しく押しの強い音色なので、そのニュアンスはFINAL FANTASY VII REMAKEの幾つかの楽曲でも生かしています。(河盛)

音楽のライトモチーフ&繰り返されるテーマについて:

どのFINAL FANTASY VII オリジナルのテーマ曲の要素から、どのような手法で本作品の音楽のパレットを広げていったのでしょうか?また今回のFINAL FANTASY VII REMAKEの新曲は、ゲーム全体でどのように使用されて、どのような手法でプレイヤーの感情移入をもたらして、本作品のテーマのサポートを行ったのでしょうか?

以下作曲家Wilbert Roget IIのコメントです:

本作の音楽に関して、新しく違うアングルを持って記述すべき点としては、音楽のライトモチーフやテーマの繰り返しだと考えています。 FINAL FANTASYVII オリジナルではバトル曲が1曲と、ボス曲が1曲だけだった印象でしたが、今回のFINAL FANTASY VII REMAKEでは、たくさんの異なるバトル曲のアレンジが存在して、時にはサスペンス/アクションの2レイヤーとして存在しており、時にはボスバトル曲であり、またカットシーン中のちょっとした曲の展開が起こりそう、と思わせるヒントとして曲が存在している印象です。

FINAL FANTASY VII REMAKEではオリジナルに登場しなかったキャラが追加され、ストーリー等も凄く丁寧に描かれているので、そういった追加された要素やシーンを中心に新曲を追加しています。

完全な新曲では、FINAL FANTASY VII REMAKEの音楽の新しい要素を打ち出す一方で、シチュエーションにあったオリジナル楽曲のメロディーをモチーフとして組み込んでいる新曲もあり、オリジナルを遊んだユーザーに懐かしさを感じて貰えるように製作しているので、同じモチーフが何度も出てくる事も増えました。

更に、今回はキャラクターの心情に合わせて、曲を途切れさせる事なくシームレスに曲を切り替える事を大前提として製作しており、カットシーンに入る前のユーザー操作時から、カットシーン曲のイントロ部分をループで鳴らし、カットシーンに入ると曲が、途切れずに展開するように作った等、色々と工夫してシームレスのゲーム性BGMも完全に合わせる形で製作しました。(河盛)

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音楽の技術について考慮すべき点:

今回の作品では、生楽器編成の曲、サンプルベースの曲のプレイバック、レイヤー化された曲、音楽システムによる複数曲のプレイバック等、の音楽の新技術は作曲自体に対するアプローチにどのような影響を与えたのでしょうか?

音楽の曲変化に関して:

フィールド中、カットシーン、バトル等、シームレスな曲変化はゲーム中の瞬間の変化の対応を支えていると思います。 この音楽の曲変化は、まるでシームレスにつながる伴奏を幻想して思わせるようですが、どのように様々なゲームプレイ状況に生かされたのでしょうか?

以下作曲家Wilbert Roget IIのコメント:

本作品は多数の日本著名ゲーム作曲家達による苦労の結晶と言えるでしょう。

(本作のサントラはなんと8枚組!)プレイした感想ですが、音楽の技術的観点で一番好きな部分として挙げられるのは、フィールド移動→バトル→カットシーン→バトルのシームレスな音楽の展開の制御です。 五番街、プレートなど、エリアによっては2つの音楽レイヤーがアグレッシブなバトル曲に切り替わりが起こっていて、新羅ビル以降の高速エリアでは様々な違うバトル曲が展開していました。ボスバトル曲に関して、バトル曲はカットシーンにもシームレスに展開してくし、ボスによっては、ボスバトル中の中間カットシーンへの音楽の展開でもダウンビートがカットシーン開始迄しっかりリズムを崩さずに待ったうえで開始していたりして、とても印象的です。

FINAL FANTASY VII REMAKEの途切れる事なく自然に音楽を切り替えるというコンセプトは、シームレスなゲーム性に合わせる為と、オリジナルでは、ほぼBGMが鳴り続けていたというのをFINAL FANTASY VII REMAKEでも踏襲する為、シチュエーションに合わせてBGMが切り替われば、音楽を鳴らし続けてもサウンドのトータルバランスを崩さないと考え、採用しました。

このコンセプトで全体を制作する為には、無暗に曲を切り変え過ぎて破綻しないように、

音楽製作前にシーンを点で見ずにチャプター全体、今までの開発より広い視野で確認し、BGMの鳴らし方や、シームレスに切り変わるポイント等をしっかり設計する事が重要でした。

設計がしっかり出来たおかげで、整合性を失わずに、ボス戦やバイクバトルのシーン等、強敵では曲がどんどん展開していって盛り上がった方がいいとなりましたし、フィールドを歩くシーンでもシチュエーション(街のエリア、屋内か屋外、会話の有無等)や心情によって曲のアレンジ具合を変えた方がいいという所も見え、非常に沢山のシーンで有効的にインタラクティブミュージックを実装する事ができました。(河盛)

Voice

ボイス再生の技術に関して考慮すべき点:

本作品のゲームメカニクスの内容やストーリー性を考慮した際に、どのような側面でボイスが必要になったのでしょうか? ボイス収録は様々なシステムに対応するために色々なバリエーションにて収録されたのでしょうか? それともゲーム進行通りに実装するために収録されたのでしょうか?

メインストーリーは進行通りに実装する為に収録されています。

バトルボイスや街での様々なボイスは演出ディレクターであり、シナリオを統括している鳥山が各バトル担当、レベル担当からの遊びの内容を汲み取りバリエーションの内容が決められ収録されています

そこからサウンド側でシステムに落とし込み、ゲームのテンポ感を考慮した調整と組み込みを行っています

(伊勢)

ボイスシステム:

本作品のダイアログは、バトル中に各キャラクターが同じような動きを演じていても各キャラのユニークさを保持させるとても詳細なレベルを達成出来ていると思います。 演技力の向上が必要になった他に、どのようなゲームシステムの影響により正しいダイアログが正しいタイミングで再生が確立出来るのでしょうか?

以下作曲家Wilbert Roget IIのコメント:

本作品のバトル中のダイアログシステムは、昨今のゲーム作品の中でも成し遂げられるのは稀なくらい素晴らしい新要素だと思います。 FINAL FANTASY VII オリジナルのマテリアシステムは、複数キャラが同じような攻撃方法を共有出来るものくらいでしたが、本作品では各キャラが違うラインのダイアログを話す事で、各キャラの特徴をより引き出していました。 例えば、クラウドは口数が少なく生意気な性格なのに対し、バレットはわざとらしい罵倒をよく飛ばす特徴があり、わかりやすいです。 似たような点では、操作キャラを変更する際に再生されるボイスや、キャラが低HP状態や仮死状態だったりする場合でも、同様な事が言えます。 本作品のダイアログシステムは各キャラの性格やキャラの関係性をより引き出すように設計されていると言えるでしょう。

今回のバトルボイスシステムは各キャラクターが特徴をもっていたので、ボイスの方も個性を出す為に同じマテリアでも各キャラクターそれぞれボイスを用意しています。

また状況や掛け合いの組み合わせでも変化をつける事で没入感を演出しています。

開発当初はもっと掛け合いと状況での鳴らし分けを考えていましたが、スケジュールとコスト面から

外したものも多々あります。

例えばバースト時の通常攻撃等も最初は変えていたり、掛け合いもシナリオ進行に沿って変化させていく等の予定はありましたが、今回は外しています。

また今回のバトルシステムはアクション性も高くなり、スピーディーかつ複数同時で進行する為

制御も細かく複雑になっています。

バトルのダイアログはキャラクターにもよりますが一人につき500ボイス前後あります。

そのボイスを100程のカテゴリに分け、ゲームの状況から判断して鳴らし分けや停止、プライオリティ等

様々な制御をかけていくというのが大まかな仕組みです。

大量のアセットを細かく丁寧に制御する事でテンポを損なう事無く没入感あるバトルに貢献しています。

(伊勢)

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Sound

サウンドの表現方法:

FINAL FANTASYシリーズはアイコニックなサウンドデザインで知られていて、これらのユニークなサウンドによって、ゲームプレイやインタラクション、キャラクターやエフェクトが表現されていると思います。 本作品のサウンドを確立するにあたり、これらの歴代のアイコニックなサウンドに対し、より現実的なビジュアル表現な見た目の本作品とのバランスをどのように取っていったのでしょうか?また、FINAL FANTASY VIIオリジナルで使用されたサウンドと比較して、より現実的なビジュアル表現と釣り合いの取れる『より現実的なサウンド』が必要になった事はありましたでしょうか?
 
まずサウンドの全体コンセプトとして、「オリジナルをリスペクトしつつ、プレイした事がない人でも楽しめる懐かしさと新しさを融合させた表現の追求」を掲げていました。

BGMについてはオリジナルを踏まえ沢山鳴らしつつも飽きの来ない、没入感を演出できるような取り組みを開発初期から設計していました。

効果音についてはグラフィック的にもアセット数においても差があるのであまり捕らわれずミッドガルの世界観を表現しました。オリジナルよりも参考にしたのは映像作品であった「FINALFANTASY VII Advent Children」ですね。当時もFoley Artistとして参加していたのでよく覚えていますし参考になりました。

(伊勢)

各キャラのサウンド:

物理的なインタラクションや、キャラ動作のサウンドを音として特徴化する事は、各キャラの様々な詳細を伝える事だと思います。 どのように各キャラのサウンドは作り上げられたのでしょうか? 例えば各キャラの特徴を捉えるために作り上げられましたか?それとも地形や、素材、足タイプ等ゲームシステムに基づいて各キャラのサウンドが作られましたか?

以下作曲家Wilbert Roget IIのコメント:

プレイした感想ですが、各キャラクターのフォーリー、足音が本作品のサウンドデザインの中でも特に自分の好みの部分で合って、特に屋内にいる際に、キャラクターの武器とマテリアがちゃりちゃりと奏でているのがしっかりと聞き取れている点などが印象的です。各キャラクターの足音の音程と音色の違いが、各キャラクターの性格を書き上げられていると感じました。

音響としての全体の環境としては様々な状況でリアルタイムにサウンドが変化出来るようサウンドドライバを強化しました。キャラクターの動作音はほぼ全て自動で発音するシステムを作り微妙な動きの表現をリアルタイムでの可変を実現出来た事は大変大きな収穫でした。

キャラクターの動作音については画期的かつ細かいサウンドデザインで構成しています

アートから身に着けている素材を選定してフォーリーを収録し、その素材を元に首、肩、腕、胸、腰、大腿部、足首、足音のパーツに分け、それぞれをアセット化しています。その中にはサウンドパラメータを可変させる為のエンベロープ情報も含みます。

その後キャラクターのボーンアセットにそれぞれのパーツをアサインする事でキャラクターの骨の速度、加速度に応じたサウンドが発音されるようにしています。

こうしてFINAL FANTASY VII REMAKEでのメインキャラクターの動作はインゲームからカットシーンほぼ全て自動で鳴るようデザインされています。

(伊勢)

各キャラクターの動作サウンドの素材に関して、伊勢さんの説明にあるようにキャラクター動作音を自動で発音させるシステム(MASTS)に対応する事目標にして、各キャラそれぞれのユニークなサウンドをフォーリーセッションにて収録していきました。 セッションの準備はとても重要で、各キャラクターの装備情報、各ロケーション情報やプロップ情報など内容をすべて事前準備するミーティングを繰り返し開催して準備を行いました。 実際のフォーリーセッションでは、全ロケーションの地形情報、各キャラクターのアニメーションの動作パターンや、首、肩、腕、胸、腰、大腿部、足首、靴などの種類毎、装備や服の種類毎に、可能な限り洗い出した上で細分化を行い、一つ一つの素材のサウンドをレコーディングしました。セッション後は各キャラのオリジナリティを生かすようエディット,プロセスする工程を組んで、最後に実装、という工程で制作を行いました。(菅沼)

MASTS:
スクウェア・エニックスは長年に渡り、ビジュアルとオーディオの分野で常に先駆けた技術で知られていると思います。本作品において、MASTSシステムがもたらした解決策やモチベーションとはどんな事だったのでしょうか?

今回MASTSは大きく進化しました。検出する部位を増やし、カットシーンでの繊細な動作の対応も実現する事が出来ました。このシステムの利点はとしてはモーションブレンドで遷移が多発するアニメーションやプロシージャルに構成されたモーションにも容易に対応できます。モーションに依存しない為、変更や調整で尺が変わってもサウンドに一切影響が出ない点は大きな利点の一つです。カットシーンにおいてもモデルを置いた段階でキャラクターサウンドは完結し、シーンのサウンドフィックスをまたず、カット変更やモーション変更にも同じく影響を受けません。会話だけのカットシーン等での作業が発生しない為制作のコスト削減にも貢献できました。

(伊勢)

環境音:

本作品では多様な環境マップが存在していますが、どのようにして各環境マップのリバーブ値(後期残響)を確立し、また初期反射のリアルタイム処理を行うためにどのような技術が導入されたのでしょうか?

以下作曲家Wilbert Roget IIのコメント:

空間音響に関して、ゲーム環境への浸透化(Worldizing)は特によく構築されている印象で、ゲーム全体のリバーブはとても良く、特にスラムの街での狭い路地やトンネルから広場への環境変化にてよく聞き取れる事が出来ました。

FINAL FANTASY VII REMAKEでは、空間音響のために、初期反射Effect、後期残響Effect、ディレイEffectの3つを用いています。

サウンドデザイナーは、空間を仕切るボリュームを配置することができます。

そのボリュームでは、ボリューム内にリスナーが含まれた際の上記3つのEffectのパラメータを設定することができるようになっていて、そこに各環境の特徴に合わせた設定が込められています。

瞬時的で極端なEffectパラメータの変更が発生してもアウトプットが破綻しないように、リアルタイムによりスムーズに変化できるような工夫が込めてあります。

現状は、ボリューム配置作業やパラメータ設定はハンドクラフトであり、自動化や省力化は今後の課題となっています。
(谷山)

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ダイナミックスミキシング:

様々なエリアを通して、ゲーム全体でどのようなミキシングのアプローチを行ったのでしょうか?ダイナミックスミキシングに対し、何のツールや技術を使用可能でしたか、またその理由を教えてください。フィールド移動→カットシーン→ムービーシーン等のシーン切り替わりについては、リッチなユーザー体験の為のシームレスなミックス体験を作り出す事に成功したと感じますか?

以下作曲家Wilbert Roget IIのコメント:

ミックスについて、本作品はゲームの歴史の中でも特にアイコン的な音楽で知られるオリジナルのリメイクでありますので、もちろん音楽はミックス上、いわゆる北米のゲームタイトルよりも、より目立った立ち位置に存在している印象です。でもプレイヤーの一人として、バトル中にボイスやSEが聴き辛いと感じた頃は一度も無く、インパクトを感じさせるものだったと思います。 それぞれのサウンドの要素をどのように構成することで、すべてのサウンドの要素が邪魔しあう事が無くうまくフィットするのか、本作品のミックスの哲学などあるのでしたらぜひお聞きしたいです。 例えば環境音は通常のレベルよりも低くする事で音楽を目立していたとか、何か特別な方法でダッキングのシステムを取り入れていた、また、どのような音楽のマスタリングのガイドラインを使用して、複数の作曲家の音楽に統一感を持たせたのか、などお聞かせもらえたら嬉しいです。

そうですね、お気づきの通り今回ミックスの全体像としてはBGMを前に来るようにしています。

自分としてはいつもより少し大きめなバランスにしていますね。

理由としてはやはりオリジナルFINAL FANTASY VIIにおけるBGMはとても重要なファクターであり、楽しみにしている方も多いと思ったからです。また今回のBGMコンセプトであれば状況により抑揚がつきユーザーを飽きさせず、不快感もなく行けると判断しこのような挑戦を試みました。

その上で様々な制御をリアルタイムで行う事で各サウンドのダイナミクスを最大限生かしたミキシングになっていると思います。

効果音では距離や空間によりエフェクトやフィルタを可変させ臨場感を出し、フィールド、バトルでのダイアログ発音時にはダッキングでBGMを下げる処理を行っています。カットシーン時も演出に合わせたBGM、効果音のボリュームを可変させトータル的に違和感が無いよう調整しています。

自分がゲームにおけるミキシングで基準とするのはダイアログですね。

今回はひとつのロケーションで目標ラウドネス値を設定しフィールド、バトル、カットシーン、を通してプレイしながらダイアログを基準にバランスをとりました。その後目標ラウドネス値に向け各種再調整していき

リファレンスを作り上げています。これらを各ロケ繰り返し、最後は通しでプレイしながら細かく調整という

流れが基準となっています。

ここら辺は大枠をシステム化しているとはいえ、大変時間がかかるところですね。

ミキシングに欠かせないツールとしては自社で開発しているデバッグツールがあります。

サウンド専用のデバッグツールで、発音や制御、距離に至るまで様々な状況を可視化してモニタリング出来るツールになります。不要な発音や音を抑制するべきサウンドがリアルタイムで確認出来る事は

ミキシングにおいても画期的で欠かせないものとなっています。

今回のようなシームレスなミックスは調整がものすごく大変でしたが、一定の成果は得られたと考えています

BGMの画期的な表現や様々なダイナミクスを生かした効果音等、今後のサウンド開発にも繋がる意義ある挑戦が出来たと思っています。

(伊勢)

伊勢さんのコメントに追記になりますが、ゲーム全体のリファレンスの構築のために、ラウドネス基準値を元にカットシーン&ムービーシーンのミックスをまず初めに行い、全体の大枠を構成して、その後フィールドシーン、バトルシーンを合わせる形でバランス調整を取っていく工程を取りました。 制作進行の観点からもこの工程が一番効率的な方法という事だったのと、様々なリスニング環境で何度も確認して長い期間ミックスを何度もやり直す事になりましたが、逆に本作品のゲーム性に最も合うミックスレベルを導き出すためのベストな工程だったと言えるのではないかと思います。(菅沼)

終わりに:

FINAL FANTASY VII REMAKEのサウンドチームメンバー全員の意見を合わせて1つの文章にまとめたとしたら、どんな1文章になると思いますか?

例えばこのアイコニックなゲーム開発に携わった経験、また本作品のサウンドを説明するとしたら、どんな1文章にまとめられるでしょうか?

「スクウェア・エニックス サウンド部みんなで作り上げた集大成のサウンド!」

でしょうか、、。

今回の開発はこれまでサウンド部が培ってきた技術をフル活用し、さらにブラッシュアップさせています。これまで様々なサウンドスタッフが築き上げてきたノウハウが重なり合いFINAL FANTASY VII REMAKEのサウンドが出来ているのだと思います。

今後も更に積み上げていき、新しいゲームサウンドの追求していければと思います。

(伊勢)

SQUARE ENIX

SQUARE ENIX

Square Enix, Inc. develops, publishes, distributes and licenses SQUARE ENIX®, EIDOS® and TAITO® branded entertainment content throughout the Americas as part of the Square Enix group of companies. Square Enix, Inc. is affiliated with a global network of leading development studios such as Crystal Dynamics® and Eidos Montréal™. The Square Enix group of companies boasts a valuable portfolio of intellectual property including: FINAL FANTASY®, which has sold over 144 million units worldwide; DRAGON QUEST®, which has sold over 78 million units worldwide; TOMB RAIDER®, which has sold over 74 million units worldwide; and the legendary SPACE INVADERS®. Square Enix, Inc. is a U.S.-based, wholly owned subsidiary of Square Enix Holdings Co., Ltd.

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