Soundminer: 初のWAAPIプロジェクト

オーディオプログラミング

Soundminerを始めて聞いた方が多いかもしれませんが、これはサウンドアセットを分類したり、探したりインポートする業務を行う、サウンドエディターやビデオエディターたちのニーズから生まれたアプリケーションです。開発が始まったのはずっと前で、ProToolsがまだMac専用だった当時は、ファイルをトラックにインポートするのにImportダイアログボックスを呼び出すしか方法がなく、そこでファイルを選択してImportをクリックしたものでした。(まだWorkspaceOSX以前の話ですよ、みんな!)一日に何千ものサウンドを編集している身には、実に面倒なタスクでした。1回のインポートに数分かかり、まだハードドライブ(少なくともDVD-R)がようやく購入できる価格になったばかり(破産せずに済む値段)で、絶対にもっと効率的な方法があるはずだ!と私たちは考えました。すでにいくつかのソリューションが出ていましたが、私たちはいつも、何か足りないと感じていました。そこで、社内用キラーアプリとして私たちのスタジオで開発し始めたのがSoundminerでした。

 

 

 

稼働中のSoundminer

数年を経てSoundminerは商用プロダクトとなり(2002年)、続いてクロスプラットフォームアプリケーションとしてリリースされました(2009年)。その間もずっと、コア機能をさらに発展させ、改善してきました。ダイアログエディターやミュージックエディターも参加し、彼らの部門の機能も追加されました。最近ではゲーミング関係者からの熱心な問い合せが増え、Mac版のユーザーが長年愛用している「プロ」機能を要求するようになり、例えばプラグイン経由の音の処理や、チャンネルの選択的な抜粋や、アプリケーション内で再生されたオーディオを再びレコーディングしてライブサウンドデザインに使えるようにすることを依頼されましたが、最も多かった要求は、Wwiseに代表されるオーディオミドルウェアとのインテグレーションでした。幸い、これは数年前から掲げてきていたゴールでもあり、最新のSoundminer v4Proのアップデート4.5も、全体的なクロスプラットフォーム対応を改善するために取り組んでいたものでした。そこで、ポーティングを始めて数か月たったところでテスト段階のプロダクトが完成しました(近日リリース予定の、HDPlusProPackアドオン)。 

むかし一緒に仕事をしていた何人かの友達が、ここトロントのゲームスタジオで働いていると聞いたので、リリース予定の機能を見せびらかしに訪問しました。彼らがWwiseを簡単に説明してくれ、使い方を見せてくれました。約1か月後に、‘SoundFrame’の噂を聞き、SDKにインポートオーディオAPIが追加されるかもしれないという話も耳にしました。 

ちょうどそのころ、別のクライアントからAudiokineticのディレクター・オブ・デベロップメントであるベルナール・ロドゥリグ(Bernard Rodrigue)氏を紹介され、改良されたSoundFrameのことを聞き、今はWwise Authoring API (WAAPI)と呼ばれるSoundFrameの今後の計画を知りました。ファイル、リージョン定義、記述メタデータなどを送信するのに必要なことがすべて揃っているか、揃う予定のようでした。多くの音は、DAWのレイヤリングやバウンスダウン処理を通す必要がありますが、単一の音やダイアログを一括コンバージョンしてSoundminerからWwiseに直接送信する使い方はいくらでも考えられます。 

一番単純なのは、フットステップのシーケンスを見つけて取り込む例です。もっと複雑な例では、1つのガンショット発砲音を、合計15個もの異なるバージョンが入ったファイルから取り出し、75%ピッチダウンして、コンプレッサー・リミッターと、リングモジュレーターと、サブハーモニックジェネレーターを通し、簡単にそのサウンドをインポートすることができます。もちろん、誰もが経験するとおり、開発中に音のコンプレッションがきつすぎると感じたり、Wwiseのピッチ変更機能に頼らずほかの14個のバージョンもレンダリングしたいと思うこともあります。Wwiseから直接、そのオーディオファイルをSoundminerに送信して返し、Soundminerがオリジナルのサウンドファイルを見つけてリージョン定義、ピッチ、適用プラグインなどをリコールし、あなたが設定を変更してWwiseに送信して、プロジェクトですぐに使えるようにできます。

Wwiseと、Soundminer HDPlusProPackアドオンをインテグレートする流れを説明するために、簡単な短い動画をつくりました。Soundminerのデータベースでサウンドファイルを選択し、音の一部をWwiseにトランスファーするところを実演しています。おまけに、トランスファーに使ったプラグイン(Waves Supertapディレイ)が、後日、調整が必要だと気付きました。Wwiseの画面から、Soundminerに対し、操作を加える前のオリジナルサウンドや設定をリコールするように指示しました。そして設定を微調整してから、新しいメディアを1つ、Wwiseにトランスファーしました。 

リコール機能と聞いて、自分の秘密が暴露されるのでは、と危険に感じる人もいるかもしれませんが、ご心配なく。音をトランスファーすると、トランスファーされたサウンドファイルの中に、リコールに必要なすべてが組み込まれます。ソースファイルへのパス、リージョン情報、ピッチ情報、そしてあればプラグインパラメータなどが、ここに含まれます。SoundminerOpen Withコマンドを受け取ると(“Open With Soundminer in File Explorer”)、動画のとおり(WwiseではCtrl-E)、最初にソースファイルが存在するかを確認します。あれば、プレイヤー(再生機能)にそれをロードしてから、リージョンまたはピッチをマークします。次に安全のために、プラグインのトランスファーがこのマシンで行われたかを確認します。確認できれば、プラグインラックもリコールします。ソースファイルが見つからなければ、ファイルがそのままプレイヤーにロードされます。以上の情報はすべて暗号化されているので、単純にバイナリエディタを使って中身を公開することはできません。

こうすればプロセスチェーンが保護され、あなたの音を盗んで、Soundminerをだましてプロセスチェーンに表示させようとしても、できません。あなたのSMDataフォルダの中に、あなたのマシン固有の鍵が生成されますが、これを信頼できる人とシェアする方法もあります。 

革新的な技術の始まりに関われるのは、本当にエキサイティングなチャンスです。WAAPIを使ったユーザーからどのようなリクエストがあがるのかが楽しみですし、Audiokineticのようにレスポンスが速い会社と仕事をするのは、新鮮です。

 

Subscribe

 

ジャスティン・ドルーリー(JUSTIN DRURY)

デスクトップデベロッパー、パートナー

Soundminer

ジャスティン・ドルーリー(JUSTIN DRURY)

デスクトップデベロッパー、パートナー

Soundminer

ジャスティンは、ソフトウェア開発の前にサウンドエディターも経験。今でも、音に向かってマイクを向けることが。

 @jaydee2190

コメント

Replyを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ほかの記事

Wwise Authoring API (WAAPI) 用の3つのオープンソースプロジェクト

Wwise Authoring API (WAAPI) は、Wwise...

16.1.2018 - 作者 ベルナール・ロドリグ(Bernard Rodrigue)

コマンドアドオンで実現できる、ワークフローの改善

継続的なワークフロー改善の努力を...

20.8.2019 - 作者 ベルナール・ロドリグ(Bernard Rodrigue)

Wwise 2021.1向けAuthoringプラグイン | パート 1: 経緯と目標

14.4.2021 - 作者 ミシェル・ドネイ(MICHEL DONAIS)

ReaWwiseを使用してWAAPIをReaScript(Lua)で実行する

22.3.2023 - 作者 アンドリュー・コスタ

Wwise 2023.1でのWAAPIについて

Wwise 2023.1では、2017年にリリースされたWAAPI(Wwise Authoring API)でこれまでにない大きなアップデートが行われています。What's New in Wwise...

31.7.2023 - 作者 ベルナール・ロドリグ(Bernard Rodrigue)

WAQL 2.0

WAQL(Wwise Authoring Query...

22.8.2023 - 作者 ベルナール・ロドリグ(Bernard Rodrigue)