ミュージックデザインのテンプレート Wwiseを使って先陣を切る

インタラクティブオーディオ / インタラクティブミュージック / サウンドデザイン

 

Foxface Rabbitfishのコンポーザーでありオーディオディレクターでもあるガイ・ウィットモア氏(Guy Whitmore)は、2019年のWwise Interactive Music Symposiumで、業界の最近のワークフローや標準を詳しく紹介し、未来を見据えたの彼のビジョンも共有してくれました。そして、先陣をきって進むためにWwiseでミュージックデザインのテンプレートを有効利用する方法を教えてくれました。以下は、コンポーザーがインタラクティブミュージックの役割を探りながら、頭に入れておくべきキーポイントを紹介したプレゼンテーションの、要約です。

音楽の「旅」

ウィットモア氏はまず、ゲームミュージックという旅において、典型的なリニアな手順に登場する典型的な役割分担について説明しました。 ゲーム音楽の、紙と鉛筆からゲームそのものまでの行程は、まず「オーディオディレクション」と「ミュージックデザイン、監督」から出発します。そのあとに「作曲」と「バーチャルオーケストレーション」に進み、続いて「オーケストレーション、指揮」から「レコーディング、ミキシング」に展開します。この時点からインテグレーションプロセスでWwise Editorとゲームエディタを使い始め、Wwiseプロジェクトをゲームに完全に実装していきます。

GWSymposium2

さて、サウンドのディレクション(方向付け)からゲームインテグレーションへと進むと、そのリニアな行程において初期の段階は、プロフェッショナルたちの参加率が高いです。作曲。ゲームエンジンとWwiseがうまく一緒に動くよう設計し、最終的に、ゲームのストーリーにとって最適なものをつくるという過程で、音楽のロジックや音楽のプログラミングに配慮する必要がある、とガイは強調します。オーディオ面での様々な役割や要素すべてが、プロジェクト成功の鍵であり、お互いのつながりや協調性が高まれば高まるほど、ゲームサウンドの質が向上します。一緒に仕事をするチームが社内チームであれ、フリーランスの集まりであれ、その混合であれ、何しろ良いチームが必要です。

ゲームエンジンとWwiseがうまく一緒に動くよう設計し、最終的に、ゲームのストーリーにとって最適なものをつくるという過程で、音楽のロジックや音楽のプログラミングに配慮する必要がある、とガイは強調します。

 

ガイは、下の図を使って理想的な協力過程を説明しています。Directionのデザインを、しっかりと考えます。コンポーザーがゲームの音や全体の音楽デザインに実際に影響を与えることができるまでに、現実的には高いハードルがあります。音楽の方向性、つまりDirectionを考えるときに、音楽の種類だけでなく、音楽がプレイヤーの気持ちをどう盛り上げるのか、ゲームをどう前進させるのか、そして全体のエクスペリエンスの様々な部分と、どうやり取りをするのかも、考えます。理想的なチーム内の協力体制では、Designだけでなく Directionも 、とらえてくれます。

Guy Whitmore - Music Symposium

音楽の方向性、つまりDirectionを考えるときに、音楽の種類だけでなく、音楽がプレイヤーの気持ちをどう盛り上げるのか、ゲームをどう前進させるのか、そして全体のエクスペリエンスの様々な部分と、どうやり取りをするのかも、考えます。

 

ギャップをなくす

今、全体の作業のほんの数パーセントにあたる部分をやりたいと思うコンポーザーが何百人もいる一方で、ミュージックデザインとインテグレーションを行う能力のある人は1%に満たない、という状況にあります。 

インタラクティブミュージックと、それを構成する数々の要素をつくる仕事をしたいと思っているコンポーザーは沢山いますが、音楽デザインやインテグレーションの作業となると、できる人は明らかに少数派だとガイは指摘します。コンポーザーがインテグレーションやプロセスを学べば、ギャップを埋めるチャンスがどれだけ大きくなるのかについて、彼は掘り下げます。ゲームコンポーザーを雇ったときの標準的な流れでは、特にフリーランスのゲームコンポーザーの場合は、キューシートと、インスピレーションをもたらすための画像が数件となります。このコンポーザーとゲームの間のギャップ、そしてゲームクライアントとのギャップは、どうやって埋めればいいのでしょうか?このプロセスは、現在も試行錯誤している段階です。コンポーザーはお金をもらい、画像に合わせて作曲する必要さえもなく、できあがったものは、そのまま誰かの手に渡り処理されます。(もしかしたらコンポーザーが、サウンドトラックをつくれるかも!)ところが、私たちがこのやり方で進めてしまうと、業界も、作曲の対象であるゲームも、損をしてしまうと彼は主張します。コンポーザーであれば、たとえミュージックインテグレーション自体を担当しなくても、その決定プロセスにおいて、あなたの意見は重要です。そこで登場するのが、Music Designという役割です。

 

Music Design ~ クライアントのために、もっとやる

リニアな作曲になれてしまっているコンポーザーにとって、インテグレーションは技術的すぎる、とよく言われます。ガイがこれを不思議だと感じるのは、コンポーザーがすでにテクノロジーの可能性を全身で受け入れているからです。インタラクティブミュージックのインテグレーションツールは、単に違うツールなだけでなく、アプローチの仕方も多くの場合は違います。Wwiseは、すべてのツールと同様に、クリエイティブな結果を目指したものです。 

ミュージックデザインとは、音楽をどこに入れるべきかをクリエイティブに考えたり、ゲームの意図を裏付けるために音楽をどのように使いたいのか、コンポーザーが工夫したりすることです。思考の過程は真にクリエイティブで、技術的な仕事に取り掛かる前に起きます。技術的な試行錯誤をする前から、ミュージックデザイナーはゲーム内容の中で、何が、どこで、いつ、どのようにして起きるのかを想像するのです。ガイは、フリーランスとなった今、作曲に加えてミュージックデザインを提供していると説明します。その役を手掛けることでクリエイティブプロセスにメリットがあるだけでなく、ビジネスとしてもかしこい判断だと言います。このノウハウを追加することで仕事のクライアントの幅が広がり、同時に、コラボレーションによるシナジーも拡大します。小規模チームにこのようなノウハウがないことが明らかになる事例は、インディーゲームです。ゲームの作曲をするコンポーザーは、たとえインテグレーションを完結させるのにプログラマーに助けてもらうとしても、制作の流れ全体を理解しておくことは、当然であるとガイは考えています 

多くの人が、複雑でおもしろくて状況に応じて変化するような曲は、必ずプログラマーが必要だと考えがちですが、実は開発チームと良好なコミュニケーションを保ち、偉大なものを求める想像力さえあれば、充分なのです。コミュニケーションをとることと、コラボレーション過程を理解することが、重要です。どんなにワイルドで突飛なアイディアも、プログラマーやデベロッパーやデザイナーと 共に 進めることで、実現します。ガイ自信も、Unrealのブループリントや、UnityのためのC#を学び続け、自分の作業パートナーやクライアントとのやり取りに奥行をもたらして理解を深めています。 

GWSymposium

プロセスの効率化 ~ Wwiseのミュージックテンプレート

テンプレート!ゲームを構築する過程で、必ずスケジュールに配慮する必要があります。状況に合わせてクリエイティブなアイディアをチームが実装できるように、合理化してギャップを埋めることが、ガイの最終的な目標です。素早くデザインして実装することは、大事です。デザインやプログラミングにあてがう資産がゲーム会社側にない場合は、実装が頓挫してしまうことがあります。それ以上突き詰めたくないからではなく、もう出せるものがないからです。目標は、会社のところに行って、プロジェクトに接続して、数日内に動作できるようにすることです。バーティカルリミキシングのテンプレート、ホリゾンタル リシーケンシングのテンプレート、サンプルインストゥルメント、イベントの設定、ステート、スイッチ、パラメータなど、すべてビルドします。Wwiseプロジェクトを最初から、またはインポートしたものをベースにつくり上げるときに、一番簡単なのは既存の「レシピ」を利用することです。テンプレートは「レシピ」をつくるときの構築用のブロックでありDNAであり、そのあとに新プロジェクトの具体的な条件に合わせて適切な形に直せます。ガイの、テンプレートを使ったミュージックデザインの進め方の案にのっとれば、完全に可能です。そうすれば、デベロッパー側がコンポーザーを助けたいと思っていてもできない場合もあるので、インテグレーションという重労働を私たち自身が担うことができます。 

 

テンプレートから、レシピへ

ガイは自分が「マクロテンプレート」と呼ぶものを、説明します。彼がミュージックデザインと呼ぶもののなかに、教科書などにこれまで取り上げられることがなかった分野が2つあります。レイヤ重ねのような小規模なコンセプトがよく事例としてあがる一方、ズームアウトしてゲーム全体を使ってテンプレートのフォーマット化をコンテキストに合わせることが、次の挑戦となります。プレゼンテーションの後半で、テンプレートを構成する部品の例をデモしますが、これらの例が、一瞬一瞬で変化するアダプティブスコア(適応する作曲)のレシピとなります。これまで、アダプティブスコアの主な対象は、トラベルミュージックなどゲームプレイの分刻みの楽曲でした。ガイは、今後はもう少し幅の広い、瞬時から瞬時へのゲームプレイの楽曲で何ができるのかに興味を持っていて、この考え方を実験しています。コンポーザーとして、エクスペリエンスをサポートするためのガイの黄金律は、何事もシンプルに、です。結局は、ゲームと、プレイヤーがそこで感じ取る内容が、肝心なのです。 

peggle2

マイクロテンプレートとマクロテンプレートの活躍の最高の例が、Peggle 2プロジェクトを例に紹介されました。Peggel 2はそれなりに奥のあるアダプティブスコアで、ゲームプレイのループは、どのキャラクターをプレイしても似たようなものでした。キャラクターごとに音楽のセットがあり、開発をしながら定義された特定のテンプレートまたはレシピに基づいて作曲されています。プロジェクトがある程度進捗した時点で、ガイは、これらのレシピに、別のクリエイティブな視野を取り入れたいと考え、仲間のベッキー・アレン(Becky Allen)とスタン・ルパード(Stan LePard)に、追加の曲を委託しました。ゲームが必要とするものを提供できるように、既に決まっていたレシピに従うことが要請されました。Pellgeのシステムの仕組みを簡単に教育すると、彼らは帰って行き、自分が担当するキャラクター用に作曲を始めました。納品物は、完全に完成されたWork Units(.wwu)としてガイに送られ、ガイがゲームにそのまま入れると、すぐに機能しました。マイクロとマクロのテンプレートやレシピを使うと開発が効率的になるだけでなく、あとから加わったコンポーザーが、作曲するインタラクティブミュージックがどのようなシステムで使われているのかを明確に把握できるようになることを、示してくれました。

こちらの動画は、以上の課題などを軽減するための、具体的なミュージックデザインのテクニックを紹介するデモもあります。ゲームミュージックを、事前に設定されたテンプレートを使いWwise内に納品することによって、ミュージックインテグレーションや開発の時間を節約できます。さらに、計画的にデザインされた音楽ではゲームからのゲームコールの数や複雑さが減り、開発者のリソースを節約し、技術的なハードルを最小限に抑えることができます。そして何よりも、コンポーザーがインタラクティブな場面において、創造性という観点で自分の楽曲に影響を与えることができます。

プレゼンテーションの動画はこちら:

ガイ・ウィットモア(GUY WHITMORE)

Composer and Audio Director

ガイ・ウィットモア(GUY WHITMORE)

Composer and Audio Director

斬新なゲームスコアで有名なコンポーザー兼オーディオディレクター。これまでにSierra、Monolith、Microsoft、PopCap/EAなどと共に、Peggle 2、Plants vs Zombies 2、Crackdown、Fable 2、No One Lives Forever、Tron 2.0など、数多くのタイトルを手掛けてきた。ガイの音楽やサウンド、そして監督力は高く評価され、G.A.N.G. (Game Audio Network Guild)アワードを4回受賞したほか、AIAS(Academy of Interactive Arts and Sciences)、Develop、BAFTAなどにノミネートされる。最近は音楽制作会社のFoxface Rabbitfishを立ち上げ、ゲーム、VR、新しいメディアなどに向けたアダプティブサウンドトラックに注力する。

https://www.guywhitmore.com/

 @guywhitmore

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